Icom ID-1 Report
アイコム デジタルトランシーバ ID−1使用レポート
コラム1:免許申請はどうやるの?
日本アマチュア無線連盟(JARL)と日本アマチュア無線機器工業会(JAIA)が
規格化を進めている「アマチュア無線のデジタル化」に基づいて開発されたデジタルト
ランシーバ「ID-1」で免許申請を行う方法について説明しましょう.
ID-1を使用した運用には必ず無線局免許申請が必要です.
すでに「3SA」や「4SA」の免許を受けているからといって,すぐに運
用を始めないように気を付けて下さい.
周波数帯と電波形式
ID-1の使用周波数帯は1200MHz帯のみです.モービル型トランシーバ
ですが,次のように発射できる電波の形式は複数あります.
(ID-800という144/430MHz帯の無線機も発売されたようですが,D-STARのすべての機能を実現することはできません.
すべての機能を実現できるのは今のところID-1のみです)
DVモード(デジタル音声モード)の電波型式(6K00F7W)
ID-1のDVモード(デジタル音声モード)の主搬送波の変調の型式は周波数変調
(GMSK)です.よって,電波形式の1文字目は「F」になります.
このFのあとは,送出する内容によって変化します.
デジタル音声通信で送出するデータ部のパケットの構成は,
「AMBE CODECにより符号化された音声フレーム」と「データフレー
ム」を繰り返しています.このように音声データとフレームデータが交
互に送信されるため,変調信号は2つ以上のチャネルを使用します.
すなわち,主搬送波を変調する信号の性質は「デジタル信号の2以
上のチャネル」なので,電波形式の2文字目の数字は「7」になります.
電波形式の3文字目は,伝送情報の型式を意味します.
フレームによる電話の伝送に加えて,データフレームを使って簡易デー
タ伝送が可能です.よって,伝送情報は「組合せ」になり,電波形
式の3文字目は「W」になります.
以上から,
「デジタル音声モード」の電波型式は「F7W」になります.
ただし,占有周波数帯幅が6kHzなので,それを表す文字列「6
K00」を前に付加してより正確に表記すると「6K00F7W」
になります.
DDモード(デジタルデータモード)の電波型式(150KF1D)
DDモード(デジタルデータモード)の変調の型式は,DVモードと同じ
周波数変調(GMSK)で「F」になります.
電波形式の2文字目は,デジタルデータモードのパケットの構成か
ら主搬送波を変調する信号の性質は「副搬送波を使用しないデジタ
ル信号の単一チャネル」となり「1」になります.
電波形式の3文字目は,「データ伝送・遠隔測定・遠隔指令」の伝
送情報の型式に該当するので「D」になります.
以上から,デジタルデータモードの電波型式は「F1D」で,より
正確な電波形式の表記は占有周波数帯幅150kHzを表す「15
0k」を付加して「150KF1D」になります.
FMモード(アナログ音声)モードの電波形式(F3E)
通常のFMトランシーバーと同じモードですので,
主搬送波の変調の形式は周波数変調で1文字目は「F」,主搬送波を変調する信号
の性質はアナログ信号の単一チャネルで2文字目は「3」,伝送
情報の型式は電話で,「E」になります.
よって,アナログ音声モードの電波形式は「F3E」になります.
申請書の「工事設計」の欄への記入
これで,付属装置を付けない場合,ID-1が発射可能な電波型式は
「F7W」,「F1D」,「F3E」であることがわかりました.
技術基準適合証明を受けた機種であれば,機器に貼付けてあるステッ
カーに書かれた技術基準適合証明番号を記入することで「発射可能な電
波の型式,周波数の範囲」,「変調の方式」,「定格出力」,「終
段管」の欄への記入を省略可能です.
ID-1に付属装置等を付けて保証認定で免許申請を行う場合は,工事
設計欄の記載を省略することができません.
「発射可能な電波の形式,周波数の範囲」の欄は次のようにします.
「変調の方式」の欄は次のようにします.
- F3E(リアクタンス変調)
- F1D,F7W(周波数変調(GMSK))
他の欄は無線機の取扱説明書を参考に記入すると良いでしょう.
申請書の「希望する周波数の範囲,空中線電力,電波の型式」の欄
への記入
(「3SA」または「4SA」)
この欄は,2004年1月13日から一括記載コードを使用して記
入することになりました.
F1D,F3E,F7Wをすべて含む一括記載コードは「4SA」になります.もしすでに3アマの操作
範囲としてA1A,A2A,A2B,A2Dの電波形式が発射でき
る無線機を使っている場合には,これらを含めて一括記載コードは
「3SA」になります.
免許申請の例
ということで,保証認定により無線局開局申請を行う場合の免許申
請書の例を次に示します.参考にしてください.(今後内容が変更
されることありますので,注意して下さい.)
D-STARデジタル無線機(ID-1)の諸元(JARL発表)
- GMSK変調 GMSK変調 Quadrature変調
- 動作周波数: 1200MHz帯
- 動作モード:
- アナログ音声通信:FM(F3E)
- デジタル音声通信:GMSK(6K00F7W)
- データ通信:GMSK(150KF1D)
- 伝送レート:
- デジタル音声通信:4.8kbps
- データ通信:128kbps
- 音声コーデック: AMBE
- 変調方式:
- アナログ音声:リアクタンス変調
- デジタル音声、データ:GMSK/FPGA(ベースバンド)
- 送信電力: 10W/1W切り替え可能可(参考:RA18H1213G1×1 13.8V)
- 受信感度:
- アナログ音声:−16dBμ
- デジタル音声:−10dBμ
- データ通信:+2dbμ
- インターフェース:
- データIEEE802.3(10BASE-T)
- コントローラUSB
- アンテナN型コネクタ(メス)
- セット内容
- 本体・・・・・・・・・・・・・×1
- コントローラ(RC-24) ・・・・×1
- スピーカ(SP-22) ・・・・・×1
- 電源ケーブル・・・・・×1
- マイクロフォン・・・・・×1
- ユーティリティーCD-ROM ・・・×1
- USB延長ケーブル・・・・×1
- イーサネットケーブル・・・・×1
- イーサネット中継コネクタ・・・×1
- 取扱説明書・・・・・×1
- 保証書・・・・・×1
- ユーティリティーソフトの動作環境
- 対応機種: USBポート搭載のPC/AT互換機
- 対応OS : Windows98 / Windows98 SE / Windows ME / Windows2000 / WindowsXP
(Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他における登録商標です。)
- その他
データ通信の伝送速度は128kbpsですが、実際の通信速度は80kbps以
下となります。
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2004.04.29.(初版作成)
2004.09.11.(最終更新)
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