Information Processing
情報処理(実習)

放送大学 愛知学習センター(面接授業) 担当:磯 直行(中京大学情報理工学部)

放送大学愛知学習センター面接授業 「情報処理(実習)」の講義用テキス トはすべてホームページ上で提供します.必要に応じて印刷 してください.

はじめに

本講義「情報処理(実習)」は,コンピュータを使った情報処理を 中心に,「インターネット」の技術とそれを使ってできること,そ して今後「インターネット」が成熟したときに注意すること(情報 セキュリティ)について,講義と実習により体験的に学習します.

地方自治体等が開催してきた「IT講習」や一般企業による「パソ コン教室」では,どちらかというとパソコンの使い方や電子メール の送り方等の基礎的学習が主目的です.本講義では近年誰もが使え るようになった「インターネットの仕組み」や「インターネットの 応用」について深く学習することを目的とします.

すでに「IT講習」や「パソコン教室」でコンピュータの利用方法 について受講された方は,この講義を受講することにより,情報処理やイン ターネット技術についてより深く学ぶことができるでしょう.ま た,IT講習やパソコン講座を受講されていない方でもTA(ティー チングアシスタント)と協力して講義が十分理解できるように配慮 します.これからパソコン講座等を受講される場合には本講義の内 容を前提とすることにより,より高度な使い方ができることでしょう.


情報処理とICT

ここ数年,ITという言葉が使われるよ うになりました.ITは「情報技術(Information Technology)」 という意味です.世の中にある多くの情報をすばやく,そして確実 に伝える技術のことです.最近ではもう少し確実な意味を含めて, ICT「情報通信技術(Information and Communication Technology)」と呼ばれることもあります. なんだか非常に難しいことのように思えるかも知れませんが,意外 と単純なことなのです.

例えば,次のようなものを考えてみましょう.

郵便

「郵便」は手紙を日本全国,いや世界中に配送する仕組みです. 投函された郵便物を郵便局員さんがポストから回収し,郵便局で仕分けし,相 手先の郵便局へ転送し,目的地の郵便受けへ届けてくれます.

新聞

「新聞」は世界中のあちこちで発生する情報(記事)を 毎日各家庭に配送する仕組みです.新聞記者さんが集めた情報を編 集者が取りまとめ,印刷して購読者の手元へ配達員さんが新聞とし て届けてくれます.

ラジオやテレビ

「ラジオ」や「テレビ」も新聞 と似ていますが,送られてくるものが紙ではなく音声や画像(ビデ オ)で構成された番組であるところが違います.また,聴取者が 見たり聞いたりする放送局を手軽に選べるという便利さもあります.
これらの仕組みは,紙,ビデオ,そして電波といった媒体(「メディア」と言います)を介して,郵便局員さ んや新聞配達員さんや放送局員さんが相手に情報を届けているとい う点で共通しています.

ICTとは,普段人間が生活する上で何気なく行っている上 記のような便利な仕組みをそのままコンピュー タやネットワークを使って実現した技術のことです. 意外にも,その技術の原理は単純で誰でも知っていることな のです.ただ,その処理をコンピュータやネットワークを使ってや たら速いスピードで行ってくれるところが今までとの違いです.
皆さんご存知のように,ここ数十年の間にコンピュータやネットワー クはものすごい勢いで発展してきました. このような高速なコンピュータやネットワークの力を借りることにより, いままで力不足で自動化できなかった社会生活の仕組みは,どんど ん自動化されて行きます.できるとわかったらICTは一気に家庭に普 及していきます.これが「IT革命(ICT革 命)」な のです.


このように,ICTは日常生活に大きな変化をもたらし,より便利な 社会を実現するようになりました.

ICTを実現するために必要なもの
(ハードウェア,ネットワーク,アプリケーション)

いままで便利な生活を支えてきたものは人間でした. 先ほどの例では郵便局員さんや新聞記者さん,放送局員さんのこと です.すなわち,マンパワーがその実力の限界でした.

一方,現代の便利な生活を実現するICTを支えるもの何でしょうか.

まずは システム(ハードウェア)が必要でしょう. 郵便局や新聞社,放送局には高級な専用設備が用意されています. 例えば郵便局には郵便物の仕分け機や大型トラックがあります.新 聞社には大型の印刷機もあるでしょう.放送局には背の高い電波塔 が必要です.もちろんこれらは高価で各家庭に用意するわけにはい きません.
一方,ICTのハードウェアとして家庭に置く必要があるものは 高速なコンピュータシステムだけなのです. 家庭に置くとすれば,パーソナルコンピュータ(パソコンとかPC と言います)になるでしょう. コンピュータは命令を与えると忠実にそれを実行してくれる優秀な 機械です.ただし,与える命令以外のことは決してやってくれませ ん.王様の家来のように,どんなことでも気がついてお世話をして くれるということはないので注意しなければなりません.


次に必要なものはコンピュータ間を接続するネッ トワークです.郵便物を運ぶための道路,新聞記者が編集局 へ情報を伝達する電話回線,放送を行うための電波など,複数の地点を 結んだ情報の伝送経路をネットワークと言います.(通常,2地点間だけ 結ぶ場合にはネットワークとは言いません)
ここで,世界中にはり巡らされたネットワークを考えてみましょ う.ふと気づいてみるとどの家庭にもある電話はネットワークを構 築しています.家庭の電話機から世界中のどの電話機のベルも 鳴らすことができ,受話器を取った人とお話ができるからです. また,郵便も世界中のポストへ郵便物を届けることができるネット ワークです. テレビやラジオも衛星を介して世界中の放送局間で中継放送を行っ ています. もう少し小さいネットワークとして,世界中にある会社の支社間 を結ぶ社内専用回線のようなものもあります. このように,現代社会は大小さまざまなネットワークがはり巡らさ れ機能しているのです.
さて,最近「インターネット」という言 葉が普及しています.インターネットは後で説明するホームページ のことと勘違いしている方が多いのですが,実はネットワー クのひとつです.ただし,インターネットは「ネットワークのネッ トワーク」と呼ばれ,すでにはり巡らされていた多くのネットワー クを接続した大きなネットワークです.つまり,相手がどこにいよ うともインターネットに接続されている地点間は,いつでも通信でき,公開 している情報はいつでも取り出すことができる仕組みをインターネッ トは提供しています.
現在でもこのような大きな可能性をもつインターネットに接続するネットワー クは後を経たず,今後もものすごい勢いで発展することでしょう. もちろん,ホームページをはじめ,多くの種類のデータがやりとり されるはずです.

最後に必要なものはアプリケーション(ソフトウェ ア)でしょう.コンピュータを動かすためには命令を与えな ければなりませんが,その命令がたくさん詰まったものがソフトウェ アで,次々に新しいものが開発されています.
パソコン用ソフトウェアの代表格は「ワープロ」「表計算」「デー タベース」です.「ワープロ」はワードプロセッサの略で,ご存知の ようにきれいに文書を書くためのソフトウェアです.家庭にはパソ コンでなくても専用機がずいぶんと普及しています.次に「表計算」は 会社の出納簿等の会計によく使われるソフトウェアです.家庭では 家計簿の計算に使うことができるでしょう.そして「データベース」 は情報をためておいて,必要な時に情報を探し出すために使われるソフト ウェアです.家庭では住所録の管理に使うことができるでしょう. 年賀状を書く時にはとても重宝するはずです.

さて,ICT革命が起こり最近のソフトウェアの代表格に追加されつ つあるものがもうひとつあります.それは「ブラウザ」 と呼ばれるソフトウェアです.ブラウザは,ネットワーク上 にある情報を拾い読みしたり調べるためのソフトウェアです. もちろんブラウザを使うためにはネットワークが必要です.ブラウ ザはネットワークを介して他のコンピュータから情報を取得したり,逆に情 報を発信することのできるソフトウェアです.


インターネットが普及すると...

以前から比べると,ICTがずいぶんと一般家庭に浸透してきました. パソコンやアプリケーションを使っているだけなら家庭内だけの話 で済むのですが,インターネットが普及し,誰でも自分のコンピュータ をネットワークで接続できるようになると,本来の便利な使い方以 外に利用したくなる人も出現してきます.

例えば「道路」を例にして考えてみましょう.

江戸時代と言えば飛脚や篭が行き交う「街道」を想像しますが, そこを行き来するのは人や馬で,目的地に向かうために利用するの が当然でした.もちろん,今から比べればその数も少なかったでしょう. 利用者は目的地に向かうのに命がけだったはずです.
時代は明治,大正,昭和と進み,街道は人や馬だけでなく自動車も 通るようになり「街道」は「道路」になります. 以前より道路を使う人が増えましたが,「目的地に向かうために使う」 という本来の使い方には変わりありません.しかし,このように道 路の使い方が簡単になってくると(成熟してくると),ほんの少数 ですが,本来の目的以外の使い方をする人が出現してきます.例えば「暴走 族」がそれです.ごく一部の人の身勝手な行動が多くの人に迷惑を与えます.

いま「道路」にたとえましたが,現代のICTで「道路」に相当する のは「ネットワーク」,すなわち「インターネット」です.道路以上にものすごい勢いで発展し ているインターネットはまもなく成熟期に入ります. このようなことは本来考えなくても良いことなのですが,今後ICT やインターネットを使いこなして行くためには,「自分の身は自分で守るテクニック」も修得する 必要があります. しっかりとインターネットを理解していれば,もしトラブルに巻き 込まれたとしても冷静に判断・対応できることでしょう. 怖がって道路を歩かないという人がいないように,しっかりとした知識を もってインターネットを使いこなしましょう.

本講義では実習を行いながら,そこで使われている「情報処理技術」 や「インターネット技術」について説明します.特にインターネッ トを使いこなしていくための知識は,テキスト中にマークで示していますのでチェックしてくださ い.


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2012.06.03.
fmiso at sist.chukyo-u.ac.jp